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最近、猫の様子が、
なんとなく元気がない、食欲が落ちてきた、熱っぽい、下痢が続く、痩せてきた、
目の色が変（黒っぽい、赤っぽい）、白目が黄色い、口の中が白っぽい、
お腹が急に膨らんできた、呼吸が苦しそう．．．
ネットで調べてみたら、「FIP（猫伝染性腹膜炎）」の可能性がありそう。
心配です。
FIPは不治の病と聞いている、いやいや最近は治療できるようになったとか、
でも治療費が高額だとか．．．
病院を探す前に、この病気のことを少し知っておきませんか？
病気に対する予備知識があれば、獣医さんの説明も理解しやすいし、
治療に対する選択も、心づもりして行けるでしょう。
FIPの原因
FCoV（猫コロナウイルス）
FIP（猫伝染性腹膜炎）は、猫コロナウイルス（Feline Coronavirus）の感染によって発症する病気です。
猫コロナウイルス（以降FCoⅤと呼びます）は、猫の腸管上皮細胞で増殖し、
軽い下痢を引き起こすか、ほとんど症状の見られないこともあるウイルスです。
多頭飼育の場合、トイレ・食器の共有や相互のグルーミングなどの接触により、
感染率が高いと言われています（35～70％）。
しかし、FCoVに感染しても、FIPを発症するわけではありません。
FCoVがFIPVに変異する
FIPV（猫伝染性腹膜炎ウイルス）はFCoVが猫の体の中で遺伝子変異を起こしたものであるというのが、現在の通説です。
FCo陽性＝FIPではありません。
従って、FCoVは猫間で感染しますが、FIPVの相互感染の可能性は低いと言われています。
FCoVがFIPVに変異する機序は、まだ解明されていませんが、
要因として、次のことが挙げられています。
①ストレス：環境の変化や、飼育密度、など
②若齢：FIP発症猫の半数以上が、2歳未満の可愛い盛りだという、痛ましい報告があります。老齢の発症もやや高めですし、他の年代でも発症リスクはあります。
③免疫抑制：猫白血病や猫エイズなどの免疫が抑制される病気にかかっていたり、自己免疫疾患や癌などの治療で免疫抑制剤を使用している場合、発症の確率が高まります。
検査と診断
動物病院で、症状・経過（とFIPを心配していること）を伝えると、検査をします。
明らかに腹水や胸水がたまっていて苦しそうな場合、
エコー検査と共に、腹水や胸水をある程度抜いてくれるでしょう。
（一時的に楽になりますが、またすぐたまってしまいます。）
この胸水・腹水と血液を検査機関に出します。
FIPの場合、以下のような検査のうちのいくつかを行います。
また検査結果は、必ずしも全て当てはまるわけではなく、症状や経過と合わせて診断されます。
①血球検査（CBC）：貧血（赤血球数減少・ヘマトクリット値の低下・ヘモグロビン濃度の低下）、血小板数の減少、白血球数の増加がみられます。
②生化学検査（血清中の成分の分析）：総たんぱく（Tp）値が高い、グロブリン値が高い（A/G比が低い）、ビリルビンが高い（黄疸）、肝酵素値が高い、などが認められます。
③血清蛋白電気泳動：血清を含む溶液に通電することで、血清中のたんぱく質を大きさの順に分けることができます。アルブミン・α1グロブリン・α２グロブリン・β1グロブリン・β２グロブリン・γグロブリンの6つの分画のうち、FIPの場合 γグロブリンが増加する、特徴的なパターンが多くの場合見られます。
④腹水・胸水の検査：腹水・胸水が溜まっていた場合、その性状を調べます。多くは黄色みを帯び、ネバネバしています。たんぱく質が多く含まれ、顕微鏡で見ると白血球などが見つかるかもしれません。
⑤抗体検査：FCoVとFIPVの抗体を区別ができないので、抗体が陽性というだけではFIPかどうか判断できません。しかし、通常のFCoV感染で抗体価3,200倍以上になることは、あまりありません（3,200倍以上だったら、FIPの可能性が高くなります）。ほかの症状と合わせて判断したり、2~4週間後に再検査をして抗体価の変動を見ることがあります。
⑥PCR検査：抗体検査より精度は高いですが、抗体検査と同様にFCoVとFIPVの区別ができなかったのですが、2015年、獣医療の外注検査を受け持つIDEXXから「RealPCR™FIPウイルス」という検査が提供され始めました。
この検査は通常のPCR検査とは違い、コロナウイルスの表面にあるスパイクプロテインの変異を検出することで、FECVとFIPVまで区別できるというものです。
⑦病理組織検査：肉芽腫がみられるタイプの病変部組織を採取して、その中のウイルス抗原を検出する方法ですが、あまり現実的ではありません。
以上のいくつかの検査と症状から、診断は下されます。
FIPと診断されたら
不幸にも、FIPと診断されたら、
数年前までは、治療法はありませんでした。
しかし、人のコロナウイルス（COVID-19、SARS、MARSなど）の研究により、
コロナウイルスに対する治療薬が開発されてきました。
猫に対しては、治験段階であり、保険の適応外でもありますが、
積極的な治療に対応してくれる病院も増えてきました。
気になる価格などについては、下の記事をご覧ください。
